黒海小麦の9月積み出し77.8%減——何が起き、荷主は何を変えるべきか
Q. まず数字の確認。どれくらい落ちたのか?
A. 断崖的だ。AXSMarineのデータ(Splash247が10月9日報道)によると、黒海の小麦積み出しは2026年9月に160万トン。前年同月の730万トンから77.8%減、前月比でも45.6%減で、2017年以来最低の9月となった。1〜9月累計は3,630万トンで前年比12.2%減、9年間で2番目の低さだ。
Q. なぜここまで急激に?
A. 商船・港湾への攻撃が秋に水域を広げたからだ。ルーマニアとブルガリアの排他的経済水域——両国ともEUかつNATO加盟国——に初めて及んだ。ルーマニア沖ではトルコ船主のウクライナ産トウモロコシ船が無人機攻撃で沈没し船員2人が死亡。ブルガリア沖でも1隻沈没、小麦積載船が炎上し18人救助・2人重傷。海事安保のAmbreyは「ロシア軍による可能性が極めて高い」と評価し、両国水域を安全とみなすべきでないと勧告した。ウクライナインフラ省の記録では7月だけで港内35隻・海上22隻が攻撃され、港湾施設への攻撃67件。2025年通年では14件だった。
Q. 迂回ルートでカバーできないのか?
A. 半分しかカバーできない。ウクライナの9月農産物輸出は240万トンで潜在能力の46%。うち130万トン(54%)がドナウ川経由だが、ビソツキー農相自身、代替ルートは輸出潜在力の45〜50%しか捌けないと認める。ジュルジュレシュティ―コンスタンツァ回廊の運賃は1トン15〜35ドルから約75ドルに跳ね、スリナ運河では一時70隻が待機した。ロシア側も稼働装港が38から21に減り、9月小麦輸出は前年比4割超減。北回りのバルト海経由は140万トンと過去最高(月間の6割)だが、港湾・鉄道・倉庫はすでに飽和状態だ。
Q. 価格への影響は?
A. すでに出ている。FAO食料価格指数は9月に136.0ポイントで前年比5.8%上昇、3か月連続の上昇。穀物は同17.2%上昇し、小麦は2023年8月以来の高値。IGCの穀物海上運賃指数(GOFI)は1月初の138から9月中旬に187へ、35.5%上昇した。バルト海―エジプト間の運賃は1週間で10ドル上がり1トン54ドル。最大のバロメーターであるエジプトの9月小麦輸入は35.9万トンで前月比50%減・前年比74%減、ウクライナが13.7万トンでロシアに代わり最大の供給元となった。戦争リスク保険料は船価の2%に達している。
Q. 荷主は何を変えるべきか?
A. 三つ。第一に、S&P Global CERAがロシア小麦輸出予測を4,250万トンから3,250万トンに下方修正した前提が「黒海が来年1月に正常化」であることを忘れないこと——楽観的な仮定だ。第二に、エジプトからバングラデシュまで買い手がアルゼンチン、豪州、北米へ予約を振り替えており、航海距離の延伸分だけ運賃に迂回プレミアムが長く残ると織り込むこと。第三に、この冬の穀物・飼料・食品原料の契約では運賃条項を再協議可能にし、ドナウ・鉄道区間の到着バッファを明示すること。
裕豊国際物流のアフリカ専線はエジプト、北アフリカ、東アフリカの主要港をカバー。詳しくはアフリカ専線ページをご覧ください。
出典:AXSMarineデータ(Splash247経由)、S&P Global Platts(Hellenic Shipping News)、World Grain、FAOのデータに基づく。
その他のニュース
出荷のご予定は?今すぐご相談を
スマート相談は数分で回答。正式な運賃は担当者が個別にお見積もりします。